四月研究所 Blog

2019/12/19 12:07



身長20センチくらいの、着せ替えができるお人形です。

色んな生地を使い、表情やお洋服を作り上げています。

プレゼント用やご自分用に、と様々な目的でご注文いただいてきました。

今日ここでご紹介したいのは、「おもいで人形」としてカテゴリを分けているご注文です。

これは、大切な家族であるペットを亡くされた方からのご注文です。


▼ 思い出は過去じゃない、今と未来につながっている


最初は当時2歳だった娘が熱を出した時に元気づけよう、と作ったお人形でした。

その後も細々と作っていたら、プレゼント用にとご依頼を受けました。

そのうちに、亡くなった猫に似たお人形をお願いしたいとのご注文をいただきました。

私自身もそうですが、ずっと暮らしていると日常の一部となった猫や犬の存在は、当たり前のこととなります。

その当たり前がなくなったとき、胸に穴が空いたような空虚な気持ちになるのです。

悲しい、とか寂しい、だけでは表現できない辛さ。

いつもそこに、当たり前にあったはずの暖かい毛並みが、もう手を伸ばしてもそこにはない。

お気に入りだった日向ぼっこの場所、ご飯を食べていた場所、くつろいでいた姿を求めて視線がさまよう。

それでも愛しい姿は見つけることはできなくて、どこにもいなくて、どうにもできない。

ただ、埋めようのない穴を思い知るのです。


(製作例:お客様から許可を頂いて掲載)


この「おもいで人形」は、亡くなったペットにそっくりではありません。

ふわふわの毛並みはなくてカラフルな布地そして何しろ、二本足で立ってお洋服まで着ています。

ペットロス、という言葉がなんだか商売じみた色味を帯びていることが些か好きではないのですが、あえてこの言葉を使うと失った存在を何かで埋めることは無理だと思っています。

例えば代わりの犬や猫を飼ったとしても、それは同じ子じゃない。

このお人形は、お客様から伺うエピソードや性格からイメージして製作します。

もしもこの子が言葉を語りかけてくれたら、こんな姿だろうかなと想像した形です。

楽しくて素敵な思い出は、つらいだけのものにするには、もったいなさすぎます。

この人形が目に入るたびに、過去のものだった思い出が今もこれからも元気づけたり笑顔にしたり、つながってゆくものへとなったら。

そんな風に願っています。


(製作例:お客様から許可を頂いて掲載)

▼ 毎日の中で、ほんの少し暖かさを


お人形は、どこへ置かれてもいいのです。

リビングでも、寝室でも、目に入るところならどこでも。

でも特に「おもいで人形」は、その子が好きだった場所に置かれたらいいかもしれません。

思わず目が探してしまう時に、視線が落ち着くから。

それぞれのお人形には、肩掛けのバッグを持ってもらっています。

このバッグには、そのお人形にしかない世界でひとつだけの物語が入っています。

小さな、ミニ絵本です。

手描きですし、印刷したような完璧な美しさはありません。

でも、心にぬくもりをもたらすことを願っています。




▼ 毎日の生活に、ほんの少しのぬくもりをプラスできたら


このお人形で何かが劇的に変わることは、ないかもしれません。

でも今までのお客様からのお声を聞いていると、なにか少しでもお手伝いができたのかなと思います。

人はなにかつらいことがあっても、平気なフリをします。

それがあたかも賢いことであるように。

だけど、つらい時はつらいって言っていいんだと思います。

このお人形が、誰かの毎日にホッとした瞬間を連れてくることを願っています。